チェルノブイリより (21)
平和をたずねて 核の傷痕 続・医師の診た記録/14 毎日新聞2016年4月12日
中絶で「先天障害」低率
「ベラルーシでは原発事故後、出生率が低下しました。胎児に重度の障害が疑われると、中絶を勧めたからです」
チェルノブイリ原発に隣接するベラルーシの医師たちの証言に、臨床医の牛山元美さんは胸を痛めた。汚染度の高いゴメリ州で医療研修を受けていた2013年3月のことである。
「ベラルーシのゴメリ州における18歳未満の子どもたち10万人当たりの疾患罹患(りかん)率」のデータでは、「先天障害」の増加率は他の疾患と比較して低かったが、しかし実態は「中絶処置」にあった。
ちなみに「疾患罹患率」によると、原発事故の前年(1985年)と11年後の97年を比較すると次のようになる。(1)バセドー病などの甲状腺疾患や糖尿病といった「内分泌、代謝及び免疫システム」では300倍(2)「消化器系疾患」は213倍(3)「呼吸器系疾患」は109倍(4)「腫瘍性病変」は96倍−と高い数値だが、(5)の「先天障害」は6・7倍だった。
牛山さんは語る。「積極的に中絶処置をしていると聞き、女性として、母親として、臨床医として、どうしてこういうことに……と思うにつけ切ないです」
【チェルノブイリより】毎週木曜日に掲載します。
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