「準備宿泊」開始の福島・大熊町 (1) 

東京新聞5.06   申請は9世帯16人のみ
【写真】準備宿泊が始まった大川原地区にある、新しい町役場などの建設予定地

東京電力福島第一原発が立地し、全町避難が続く福島県大熊町の一部で、住民が夜間も自宅に滞在できる準備宿泊が四月から始まった。来春の避難指示解除に向けた動きだが、開始一週間で宿泊を申請したのは九世帯十六人のみ。町を歩くと、放射能汚染や生活基盤への不安から「戻らない」と決めた多くの町民たちと、帰還を急ぐ行政との間に温度差を感じた。

雑草に覆われた田んぼを横目に、準備宿泊が始まった大熊町大川原(おおがわら)地区を歩くと、持参した線量計の警告音が突然鳴り出した。毎時〇・五マイクロシーベルト。国が長期的な除染目標とする〇・二三マイクロシーベルトを大きく上回る。

経営してきた建設会社の事務所に、昼間だけ来て掃除していた増子四郎さん(70)が淡々と話した。「戻るっていう人はほとんどいない。私もまだ様子見。準備宿泊が始まれば復興が進んでいると思うだろうけど、そうでもないんだ」

県南東のいわき市に避難中。三人の子と七人の孫は事故後、県内外に散らばり、町に戻るつもりはないという。「若い人は放射能が心配だから。ここは人もいないし、店もない。避難先の方が便利」。いわき市内に家を買い、週一度は孫と会えるので「満足している」と笑う。

原発に近い海側は放射線量の高い帰還困難区域で、準備宿泊の対象はもともと居住者が少ない、山側の百三十九世帯三百七十九人。全町民の3%だけだ。すれ違う人はなく、大型ダンプが行き交う道の先には造成地が広がっていた。

近くの現地事務所の町職員は造成地について「新しい役場や、スーパー、医療施設も造る。町民の要望が最も多い」と説明した。町は大川原地区を復興拠点と位置付け、六十七億円かけて新庁舎などを建てる。かつて町の中心で、今は放射線量が高くて入れないJR大野駅周辺も、将来的に人が住めるよう、国費を投じて除染を進める計画だ。

事務所隣の町民休憩所に人影はなく、周りにいるのは建設作業員ばかり。復興庁の調査では「町に戻らない」という町民が六割を占める。帰還が前提の政策は、住民の思いと溝があるのでは…。そんなことを考えていると、線量計がまたピーピーと鳴り出した。

◆6割が「町に戻らない」意向調査
来春の避難指示解除を目指す福島県大熊町は4月24日から、居住制限区域の大川原地区と、避難指示解除準備区域の中屋敷地区で準備宿泊を始めた。両地区は先行して除染やインフラ整備を行ってきた。

4月1日時点の住民登録者数は1万471人。県内への避難者は7931人で、県外は首都圏を中心に2540人。復興庁が今年1月に実施した住民意向調査(全5218世帯対象、回答率50.3%)では、町に「戻らない」は59.3%、「戻りたい」は12.5%、「まだ判断がつかない」は26.9%だった。

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