放射能と闘う保育者たち 原町聖愛こども園の7年 (4)

河北新報 7.11   根拠/情報公開で信頼築く

【写真】園の駐車場で空間放射線量を測る職員=5月下旬

東京電力福島第1原発から24.5キロ地点にある原町聖愛こども園(南相馬市)。2011年10月に現地で保育を再開後、1日も欠かさずに駐車場、玄関、各保育室の空間放射線量を測り続けている。

<専門家 調査協力>
放射能をむやみに怖がらず科学的データをきちんと集めて、安全であることに根拠を持つ。「全ては保護者に、外遊びも含めて自分たちの保育を納得してもらうため」。遠藤美保子園長(66)は言う。
保育再開直前の11年9月、駐車場の空間放射線量は平均0.45マイクロシーベルトあったが、14年3月には0.12マイクロシーベルト、現在は0.06~0.08マイクロシーベルトの範囲で推移する。
専門家の力も借りた。遠藤園長は、支援を通じて知り合った放射能の研究者に園庭の調査を依頼した。「放射能は目に見えない。除染しても不安は消えなかったが、科学者が分析して『大丈夫』と結論を出した。園庭は安全だと確信を得ることができた」
今年5月、園の近くにある河川敷で4、5歳児に川遊びをさせる計画があった。職員がその河川敷で地域住民が遊んでいるのを見て「安全」と思ったからだ。しかし、実際に空間放射線量を測ってみると0.452マイクロシーベルトと高い数値が出た。
遠藤園長は「しっかり線量を測って自分たちの目で確認しないといけないと、改めて職員全員と再確認した。保護者に説明がつかないことはしてはいけない」と話す。河川敷での川遊びは取りやめ、空間放射線量の低い別の場所を探して、川遊びを実現させた。

<苦い記憶教訓に>
園の保育情報は、空間放射線量の数値も含めて積極的に保護者に公開する。遠藤園長には苦い記憶がある。
保育再開後間もなく、原発事故以前に採った松ぼっくりを使って、ペンダント作りをした。ある子どもが、迎えにきた母親に作品を誇らしげに見せると、母親は「どこの松ぼっくりなの」と怒ったという。子どもは驚いて泣きだした。
保育者が「事故前に採ったものだから安心して」と説明したが、しばらくぎくしゃくした関係が続いた。
14年にも、山梨県から支援物資で届いた松ぼっくりで作品作りをしたとき、「どこのものを使っているのか」と聞いた母親がいた。
遠藤園長は「保護者は心配で心がいっぱい。その気持ちはよく分かる。信頼関係が崩れると、取り戻すには時間がかかる。丁寧に情報を提供していく必要があると肝に銘じた」と話す。

<自分たちの目で>
12年度に外遊びを解禁するとき、14年度に時間を延長するとき、15年度に時間制限を撤廃するときと、その都度、保護者総会を開いた。毎日測ってきた空間放射線量のデータや専門家の見解など根拠を示して説明し、全員の了解を得た。
園庭の除染や環境整備にも積極的に参加してもらい、自分たちの目で「大丈夫」と実感してもらった。
「最終的に決めるのは親。1人の不安も置き去りにしない」と遠藤園長。保護者との厚い信頼関係が、非日常の保育にはなおさら必要不可欠だと学んだ。

あんふぇす

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

≪せいぶらいふあくしょん≫  

2013年11月、若者3人とおやじで始めました。

light(明るい、軽い) で、 たのしく 無理なく、対話を通してface to face(顔の見える関係作り)を進めます。 

この横断プロジェクトは特定の団体に属さない非営利の市民活動です。

福島第一原発事故を教訓に、放射能から身を守り、脱原発を願う人たちとあらゆる思想・信条を超えてつながります.

≪手をつないでください≫ 

このアクションに共感し、No Nukesを願う人誰でも歓迎です。
ひとりひとりが自ら考え行動する。手伝える人は手伝う。
ネットでつながるゆるやかな会です。

このプロジェクトに参加ご希望の方はinfo@save-life-acton.org、または☎080-5325-7128〔平野)まで

≪カンパのお願い≫   (^_^;)

振替口座:ゆうちょ銀行 00980-7-234353 セイブライフアクション

他行から:店名099/当座/0234353

この活動はすべてカンパによって運営されています。(1000円でステッカー約200枚分)

知人・友人に、会合で…ステッカー配布お願いします。
ステッカーを置いてもらえるお店など、ご紹介ください。
皆様からの投稿、メッセージお待ちしています。

ページ上部へ戻る