<浪江町長選>「戻れる町」どう描く 難題山積、町民は疲弊

河北新報 8.02

東京電力福島第1原発事故対応の指揮を執り、6月27日に死去した馬場有(たもつ)氏の後任を決める福島県浪江町長選は5日、投開票される。避難指示は昨春、帰還困難区域を除いて解除されたが、町内居住者は事故前の4%に満たない。家族や地域の結び付きを失い、避難を続ける町民の疲弊は底知れず、難題を抱える中での選挙戦となっている。(南相馬支局・佐藤英博)

<生活成り立たず>
 「町長選? 話題にもしねえ」。南相馬市の災害公営住宅で避難生活を続ける男性(84)は話す。
 東日本大震災で大津波に見舞われた浪江町の請戸漁港で漁業を営んできた。自宅も息子の漁船も流失し、全町避難で、二本松市に5年間暮らした。
 南相馬の公営住宅を選んだのは浪江に近いため。今も度々、請戸に通う。「巨大な堤防で海が見えねえ」。地区は変わり果てた。
 戻れるなら戻りたいが、家もスーパーもない。隣組は解散し、散り散りになった。とても暮らしが成り立たないのが現実だ。
 浪江町は、馬場氏が掲げた「町のこし」を目指してきた。請戸漁港は復旧工事が進み、岸壁ができ漁協の試験操業がスタート。魚市場も再建される見通しだ。
 今春には、世界最大級の水素製造拠点を目指す産業団地の造成が始まった。認定こども園と小中学校も開園・開校した。
 だが、住民の帰還は進んでいない。町内居住者は777人(6月末現在)。事故前の約2万1000人に遠く及ばない。町のアンケートでは「帰還しない」が5割を占める。「判断がつかない」が3割で、「帰還したい」は1割強にとどまる。

<終結に長い年月>
 馬場氏が主導し、町民約1万5700人が参加した東電への慰謝料増額請求の実現も大きな課題だ。
 和解仲介手続き(ADR)は東電の6度の拒否で打ち切られた。弁護団によると、2013年5月の申し立て以降、参加者のうち800人以上が死亡した。秋以降に見込まれる数千人規模による集団提訴は、終結まで長い年月を要する。
 「自分はもう高齢。裁判の結果を見るのは不可能かもしれない。子や孫に訴訟を引き継げるのか」。訴訟に関する町の説明会では悲痛な声が相次いだ。
 廃炉作業が続く第1原発では、放射性物質トリチウムを含む処理水への対応が迫られている。町外避難を続ける男性(70)は「海洋放出されたら、取り返しがつかない。誰が魚を買う。戻る人はますます減る」と心配する。
 「帰還者が少なければ、近隣との合併話が盛り上がるだろう」と別の男性(71)。地元の苦悩が正確に伝わり、浪江が残るには「馬場氏のように東電や国と対峙(たいじ)しないといけない」と指摘する。

 ◇福島県浪江町長選立候補者
吉沢 正巳64 畜産農家   無新
吉田 数博72 元町議会議長 無新

【写真】魚市場や防潮堤の整備が進む請戸漁港

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