チェルノブイリより (48)

「1986年4月26日、チェルノブイリ原発4号炉が爆発したことによって、放射線を浴びた粒子90㌧が外部に放出されました」
10人ほどのツアー客が説明に耳を傾けている。彼らは、チェコ、オーストリア、カナダなどからの観光客で、多くが20代から30の若者だ。
Tシャツと短パンという典型的な欧米の観光客スタイル。なかでも、なぜか「都道」と漢字でプリントされたTシャツを着たチェコの若者が、スナック菓子をほおばりながらガイドさんの解説を聞こうとしてたしなめられた。
「ゾーンでは、許可されたところ以外ではものを食べないでくださいって、最初に言いましたよね。私はあなたの行動が信じられません!」
痛烈にしかられて肩をすくめ、仲間に冷やかされている姿が苦笑を誘う。事故のあとに外国で生まれた世代にとってチェルノブイリは歴史的な遺跡に過ぎないのかもしれない。もちろん私たちにとっても、福島第一原発の事故が起きていなければ忘れていた出来事だ。
チェルノブイリ26年後の健康被害 低線量汚染地域からの報告
馬場朝子、山内太郎著 NHK出版(2012年9月発行)より抜粋 その6
【チェルノブイリより】毎週木曜日に掲載します
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