福島の子、関西おいで キャンプや「幼稚園留学」で支援
原発事故で外遊びに不安 「息長く」阪神の経験基に &nsbp;&nsbp;日本経済新聞8.18
東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所事故の影響で、外で遊ぶことに不安をもつ福島県などの子供を受け入れてリフレッシュしてもらう取り組みが関西各地で続いている。保養キャンプや、幼稚園“留学”など形態はさまざま。資金不足など課題はあるが、支援者は阪神大震災の経験から「息長く続けることが大切。被災地を励ましたい」と願う。
「冷たくて気持ちいい」。8月上旬、大阪府高槻市の摂津峡に子供の歓声が響いた。福島県などの幼児から中学生の子供17人と保護者3人が参加した「たかつき保養キャンプ」。2013年から毎夏続いている。
同県郡山市から3年続けて姉妹で参加する小学6年の女児(11)は「地元の川では泳げないから楽しい」と喜ぶ。小学生の娘2人を連れ、福島県に近い栃木県北部から参加した母親(45)は「見えない放射線が不安で外遊びを制限しがち。のびのびと遊ばせられてありがたい」。
参加費は食事代の1泊1500円で、子供の交通費は主催者側が負担する。期間中の7日間、ボランティア約100人が協力する。震災後、住民有志が支援をしたいと始めた。事務局の松野尾かおるさん(73)は「自然の中で遊ぶ子供たちを見るとやりがいを感じる」と話す。
福島県内では国や自治体が放射性物質の除染作業を進める。公園などは土や遊具の入れ替えで放射線量は下がりつつあるが、山林や川は除染が手付かずのままの場所も多く、子供たちが自然の中で遊ぶことが難しい状況が続く。
支援者の調査では、関西で夏の保養活動に取り組むのは16年時点で少なくとも42団体ある。全国的には震災から5年をめどに活動を打ち切る団体が目立ち、13年からの3年間で1割減った一方、関西では6団体増えた。阪神大震災を経験し、子供には長期にわたる支援が必要との認識が広がっているためとみられる。
京都府南丹市の古民家で7~8月、約40日間の長期キャンプを行うのは「ゴー!ゴー!ワクワクキャンプ」。約80人の親子が平均で10日ほど過ごす。約300万円の費用は主に寄付と助成金でまかなうが赤字の年もある。スタッフの伊達一哉さん(30)は「人手や資金はかさむが、多くの子供が参加できるよう開催期間は長く設けたい」と話す。
福島県の幼児と保護者を幼稚園に一定期間招く取り組みも広がる。任意団体「ミンナソラノシタ」(京都市)は今秋に約3週間、京都市内の2幼稚園で園児を受け入れる。地元企業の協賛で家具を備えた宿泊用の住宅を提供し、保育料は園側が負担する。福島県の母子との交流を続けてきた代表の林リエさん(39)は「ひとごととは思えない。遠く離れているからこその支援で応援したい」と話す。
課題の一つは資金や人手の不足だ。保養活動を支援する任意団体「リフレッシュサポート」(東京)が行った15~16年の調査では、全国107団体のうち28団体が「資金不足」と答えた。
保養事業に取り組むNPO法人「シャローム災害支援センター」(福島市)の吉野裕之さん(51)は「震災後3年は特に外遊びの制限が厳しかったため、子供は今も室内遊びをしがちで肥満や運動能力低下が目立つ。電力会社や国、自治体が補助するなどの体制づくりが必要」と訴える。
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