おもてなし、浪江の味も

いま子どもたちは 朝日新聞1.07

「たぶん、もう住めない」故郷を離れて、避難先から70km離れた浪江高校の仮設校舎に通う。

「被曝(ひばく)してんの?」。避難先の山形県の中学校に転校したとき、今野さんはクラスメートからいきなり言われた。
修学旅行先で「福島から来て大丈夫なのか」と言われ、泣きながら帰ってきた子どももいるという。

浪江について話すことにはためらいも。
それでも故郷のことなら「じゃんじゃん話したい」と思う。
「浪江は放射能と関連づけて報じられることが多いけど、それすら知ってもらえるチャンス」jtrs早川マップ

写真:「おいしい!」と自分たちでつくった地元名物の焼きそばをほおばる生徒たち=いずれも福島県本宮市の浪江高

【新聞記事全文】 久しぶりに訪れた実家は野生動物のふんとほこりで覆われていた。何とも言えない臭いが立ちこめる。3年前、中学3年生だった今野亜莉沙さん(18)は土足で上がった。以前なら親に叱られていたが、「たぶん、もう住めない」。東京電力福島第一原発の事故で全町避難が続く福島県浪江町が、故郷だ。

今は避難先から県立浪江高校に通う3年生。仮設校舎は約70キロ離れた県内の本宮市にある。多くの生徒が、町の仮役場がある二本松市や本宮市など安達地方に住んでいる。

今野さんは浪江出身の同級生、熊谷磨美さん(18)らと昨年、県が小中高生対象に募集した旅行プランづくりに応募した。安達地方と浪江町を県外の人に紹介するプランの名前は「安達さこらんしょ~スイーツめぐりと、ちっと浪江~」。「ちっと」は「少し」という意味だ。

最初は浪江には「ちっと」も触れないつもりだった。昨年6月、プランを担当する鈴木知洋教諭(33)から「安達のスイーツめぐりができる」と声をかけられた。二本松城跡がある二本松市は、城下町らしく老舗の和菓子店が多い。安達地方で食べ歩き、紹介するつもりで「やります」と答えた。

それなのに、安達に絞ったプランを考え始めると、鈴木教諭が言った。

「浪江がどういうところか、自分たちが生活しているところの人や、県外の人にも知ってもらいたくない?」

それはそうだ。浪江高だから、ふつうは浪江町にある名所や食べ物を紹介するのだろう。けれど今、町を訪れてもらうことはできない。それなら安達地方にある浪江のものを紹介してはどうか。「知ってほしい」と今野さんたちは思った。

実は、浪江について話すことにはためらいも。「被曝(ひばく)してんの?」。避難先の山形県の中学校に転校したとき、今野さんはクラスメートからいきなり言われた。自分たちとは違うと、突き放されたような気持ち。「同じ東北でさえこうなのに、他の地方から来る人はどう考えているんだろう」

原発事故前の町の記憶も薄れてきた。クラスメートとの間で浪江の話が出ても、はっきり場所が分かるのはショッピングセンターくらいだ。両親も忙しく、3年前を最後に町に入ってはいない。

熊谷さんは今、福島市で暮らす。浪江よりもずっと都会だ。友達と街へ買い物に行ったり、お茶をしたりするのは楽しい。けど、ふいに違和感が頭をもたげる。浪江にいたら何をしていただろう。

プランには浪江のことを「ちっと」だけ盛り込んだ。一つは、震災後に二本松市で再開した伝統工芸品・大堀(おおぼり)相馬焼の器づくりや絵付け体験。もう一つは、ご当地グルメの祭典「B―1グランプリ」で2013年に1位に輝いた名物「なみえ焼そば」を旅行者と一緒に作ることだ。

昨年12月、仮設校舎の裏にぶわっとソースの香りが広がった。まず自分たちで焼きそばを作ってみた。「重い重い!」。鉄板の前で笑い声を上げながら、制服姿の生徒たちが、太麺に大きなへらで立ち向かう。「これ何? 豚肉?」「油が違うからかな、おいしいな」

3月に高校を卒業すれば2人とも福島県を離れる。今野さんは上京してファッション関係の学校に。熊谷さんは茨城県で動物看護師になる勉強をする。福島県のホームページなどでプランを知って訪ねて来る人たちとは出会えない。

東京や茨城県で知り合った人が興味を持ってくれれば、浪江のことを語るつもりだ。

友達と遊んだこと。近くの海に冬でも足をぱしゃぱしゃさせに出かけたこと。今野さんは「帰りたい。なんでか分からないけど」という。町名が多くの人の口にのぼらなくなることが怖い。町がないことになってしまうのでは、と。「浪江は放射能と関連づけて報じられることが多いけど、それすら知ってもらえるチャンス」

熊谷さんは、被災後の浪江のことをうまく話せる自信はない。それでも故郷、浪江のことなら「じゃんじゃん話したい」と思う。もちろん、自分たちの思い出も込めて。(永野真奈)

■観光客回復傾向、震災前の8割に

一時は東京電力福島第一原発事故前の約6割にまで減った福島県への観光客は一昨年、約4689万人と8割にまで回復した。宿泊者数は延べ約1106万人で全国13位。温泉や花見など福島を訪れる旅行者は増えている。

昨年4~6月は県とJR東日本が大型観光企画「ふくしまデスティネーションキャンペーン(DC)」を実施。観光客数は1357万人超で、前年同期よりも12・2%増えた。駅で観光客にあいさつしたり、観光地を案内したりする「おもてなし隊」には県内から15万人が参加した。子どもも多く、修学旅行先の関西地方で、福島を紹介するチラシを配る中学生もいた。

震災以降、支援が全国から集まる福島。一方、見えない放射能への不安が人々に向かうケースもないわけではない。県教育委員会によると、修学旅行先で「福島から来て大丈夫なのか」と言われ、泣きながら帰ってきた子どももいるという。

福島に誇りと愛着を持ってほしい。県は一昨年から故郷の魅力を発見し、旅行プランとしてまとめる「子ども ふるさと福島 魅力発掘プロジェクト」を始めた。昨年は小中高15校が参加。ホームページなどで公表し、観光客を集めたいという。

◇「どうぞおいでください」という福島の方言「こらっせ」。子どもたちは外から福島に人を呼び込もうと、様々な知恵を絞っている。地元への愛情が詰まった旅行プランやチラシ――。そこに関わった子どもたちの物語を紹介する。

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≪せいぶらいふあくしょん≫  

2013年11月、若者3人とおやじで始めました。現在、たくさんの方に参加・協力、応援いただいてます。(*^_^*)

light(明るい、軽い) で、 たのしく 無理なく、対話を通してface to face(顔の見える関係作り)を進めます。 

この横断プロジェクトは特定の団体に属さない非営利の市民活動です。

福島第一原発事故を教訓に、放射能から身を守り、脱原発を願う人たちとあらゆる思想・信条を超えてつながります.

≪活動内容≫    2016年9月現在

 1) 原発事故による放射能汚染や健康被害の存在をより多くの市民に知ってもらう→「気づき」の場
 2) 若者への原発/放射能情報発信、学習会 保養キャンプへの若者参加のコーディネートなど
 3) 食の安全ネットワークの構築→「交流・対話」の場 あんふぇす(食の安全フェスタ)の実施
 4) 被災者、避難者の人権擁護
 5)被災地の様子を伝え、原発事故が招く災害情報を正しく読み解く(メディアリテラシー)
 6)原発事故に由来する人権学習、環境教育、放射能防護教育、食育の推進

≪手をつないでください≫ 

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ひとりひとりが自ら考え行動する。手伝える人は手伝う。
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