たまり続ける汚染水、巨大タンク群に圧倒
京都新聞 11.02 福島第一視察ルポ
深刻な事故から7年7カ月が過ぎた福島県の東京電力福島第1原発。構内は放射線量が下がり、廃炉に向けた作業が続いている。しかし、燃料の取り出しや増え続ける汚染水の処理にめどは立っていない。今月18日、共同通信や地方紙各社の論説委員とともに現地を訪れた。
覆いが付けられ、頑丈そうな足場が組まれた原子炉建屋4棟を見渡せる高台に立った。作業員やトラックが行き交う。通常の工事現場のような雰囲気だ。
ピッという線量計の上昇音でわれに返った。空間線量は毎時120マイクロシーベルト。事故時からは激減したという。
構内には意外なほど軽装で入れた。普段着の上に薄いベストと防じんマスク、2重履きの靴下にゴム靴、ヘルメットと軍手。
地面のあちこちに灰色のモルタルが吹き付けてある。放射性物質を含む粉じんの飛散を抑えるためだ。こうした対策で低線量のエリアが増え、敷地の96%は一般作業服での立ち入りが可能になった。「作業効率は大幅に向上した」(東電)という。
高台を下り、水素爆発で屋上上部が吹き飛んだ3号機の脇に進んだ。津波で削られた壁、爆風でぐにゃりと曲がった鉄筋がむき出しのままだ。空間線量は同250マイクロシーベルト。今年5月までは完全防護服が必要だった。
建屋西側に広がる汚染水保管用の巨大なタンク群には圧倒された。溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)冷却のため循環させている水に1日約160トンもの地下水が流れ込み、汚染水は日々たまり続けている。
3年前に設けられた大型休憩所には地元食材を使ったメニューが並ぶ食堂やコンビニがあり、約4200人の作業員が英気を養う拠点になっている。
約1時間半の取材で累積被ばく線量は40マイクロシーベルト。東京-ニューヨーク間を飛行機で移動した時に自然界から受ける被ばく線量(100マイクロシーベルト)より少なかった。
入構に際しては運転免許証による本人確認や手荷物検査があり、「核物質防護」を定めた法令などを理由にカメラや携帯電話の持ち込みは禁止された。【写真】廃炉に向けた作業が進む原子炉建屋を望む。左から2号機、3号機、4号機(許可を得た共同通信による代表撮影)
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