漁で生きる意地 葛藤の海、福島の若者たち ②
水揚げが一段落すると、漁師の高橋佑輔さん(27)が潜水のため、ドライスーツに着替え始めた。操業中に引き上げた流木が漁船のスクリューに接触したらしい。疲れた体に暑さがこたえる。苦しさにもだえるような表情だった。
県内の高校卒業後、迷いなくこの道を選んだ。漁師生活は10年になる。「4年たっても仕事量は震災前の3カ月分にしか値しない」と、高橋さんは話す。震災前は、沖へ出て魚を取り、翌日の漁の準備などを終え、くたくたで家に帰り、翌朝も船に乗り込む。当たり前の日常が少しずつ遠ざかり、これまで体で覚えた仕事の感覚が鈍っていると感じる。
東京電力福島第1原発事故で漁の自粛を強いられても、父が苦労して船を手に入れ、築き上げてきたものを駄目にしたくない。それに、漁師へのこだわりには原発禍に負けたくない意地もある。
とつとつと話す若い漁師たち。仕事に打ち込む彼らの目には、海から絶対に離れない決意が見える。
自宅の作業場で漁具の手入れをする小松涼平さん(32)。幼稚園の卒園文集に将来の夢を「漁師」と書いたことを今も覚えている
毎日新聞 eye見つめ続ける大震災 7月3日朝刊より
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